World Mystery Tour by Mr. M
                 



事件ファイル03


仁義なき戦い・米国人編


       M氏はN国の某YHAの食堂でひとり遅い夕食をとっていた。ニンジンとピーマンが
       苦手という、まるで子供のように純粋な心をM氏が選んだ今日の料理は、レトルトの
       カレー。上手くニンジンを避けながら食べるには、それなりの熟練した「技」が必要と
       なる。しかし、自称「スプーン使いの魔術師」のM氏は、器用にニンジンを避けながら、
       食を進めていた。 

       その時、突然背後から1人の白人が日本語でM氏に声をかけてきた。

          「あの、つかぬ事をお伺いしますが、日本の方ですか?」
          「はい、そうですが…」

       余りに流暢なその日本語に、M氏は驚きを禁じえなかった。しかし、その男はそんな
       M氏の驚きをよそに、一方的におしゃべりを始め出した。それにしても実にキレイな
       日本語である。いわゆる「外人の話す日本語」ではなく、まるでNHKのアナウンサー
       のような日本語であった。

       アメリカ・コロラド州出身の30歳、大学で日本文学を専攻していたというこの男は、
       最初の方こそ辺り障りのない話をしていたのだが、時間が経つに連れて徐々に日本人
       の英語の発音についての批判を始めだした。

          曰く、日本人はthとsの発音の違いが解っていない。
          曰く、日本人はRとLの発音の違いも解っていない。
          曰く、日本人はBとVの発音と違いに至っては絶望的だ。

       以下、延々と続く非難に対し、M氏はただただ堪え難きを堪えた。忍び難きも忍んだ。
       しかしながら、彼の攻撃はその後も延々と続き、一向に終わる気配は無かった。

       どれくらいの時間が経過したのだろうか? ようやく話題が日本人の英語批判から、
       やっと別の話題に移った。

          「ところで、あなたのローシンはまだお元気ですか?」
          「ローシン?」
          「はい、ローシン、Parentsです。」
          「あ〜両親のことネ。うちの両親は・・・」

       そう言いかけた、まさにその時である!! ある1つの「仮説」がM氏の頭の中を稲妻の
       ように走った。



        コイツ、ひょっとして‘リョーシン’って
                 発音できないんじゃねーかぁ?



       M氏は自分の仮説を証明すべく、その男に次のように質問してみた。

          「ね〜っ、ちょっと、“りゃ、りゅ、りょ”って言ってみてよ」
          「ラ、ル、ロ、ラ、ル、ロ・・・ラ、ル、ロ・・・・」

       仮説が法則に変わった。男は何度トライしても「りゃ、りゅ、りょ」を「ラ、ル、ロ」としか
       発音できなかったのだ。その瞬間だ! M氏の瞳がキラリと輝いた! そして、男に
       向かって、「ダメ押し」の一言を浴びせかけた。





          あっ、私の親ネ。 親は方とも養を

          兼ねて行をし、情を楽しみながら、館の中の

         亭の理を食べるのが好きなんですよ。

         




       男は絶句であった。そして、その瞳孔は左右ともにスッカリ開いてしまっている。
       勝った・・・・・・M氏は自分の勝利を確信した。その後のM氏の調査によると、
       ほとんどの西洋人は「りゃ・りゅ・りょ」が発音できないらしい。



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