World Mystery Tour by Mr. M
                 




事件ファイル07

                    機内騒然編


       「ワッハッハ、ワ〜ハッハッハ!」 M氏は思わず声を上げて大笑いしてしまった。

       ここは某S航空の機内。199×年○月△日、S国での労働を終えたM氏は、妻子の
       待つ某N国に戻るところであった。この便は夜8時45分にS国を離陸するナイト・
       フイト。機内食のサービスが終了すると、キャビン内の照明が落とされ、ほとんどの
       乗客が深い眠りにつきはじめた。

       乗り物の中では絶対に眠ることができない体質のM氏は、完全にヒマを持て余して
       いた。ここで賢明なる皆様なら、「映画でもみればイイのでは?」と思うことであろう。
       が、M氏は語学関係の仕事に従事しているにも関わらず、洋画が大の苦手だった
       のだ。 そんなワケで、M氏は静かに酒を飲むしかやることがなかった。

       何時間ほど飲み続けただろうか? さすがのM氏もだいぶ酔いが回ってきた。いわゆ
       る「酔った勢い」というやつで、ふとM氏は普段は絶対に見ることがない機内販売の
       カタログを手にして、何気なく見はじめた。早い話がそれくらいヒマを持て余してい
       たのである。

       さすがS航空の機内販売。世界各国のありとあらゆる商品を扱っている。ページをめく
       っていく内に、M氏の目に「電子手帳」という文字が飛び込んできた。値段は日本円で
       約8千円。写真で見る限りは恐ろしくセコそうで、いかにもスグに壊れそうである。

       「今どき、こんなの買う人がいるのかよぉ〜。アハハハハッ。」 M氏は酔っ払い独特
       の傲慢さでそう呟きながら、写真の横に書いてある説明書きを読んでみた。ご丁寧に
       日本語・英語・中国語の3ヶ国語で書かれている。

       その時だ! 周囲の人間が寝静まっているにもかかわらず、M氏は思わず大爆笑して
       しまった! そこには次のようなキャッチ・フレーズが書かれていたのである。


         あなたのスケジュールを300年間管理!


       M氏の知り合いの中には非常に変った人も大勢いるが、さすがに300年も生きそう
       な人間は誰もいない。英語や中国語でも同じように書かれているのもミョーに笑える。
       もちろん「長く使えます」と言うことを強くアピールしたかったのだろうが、いくら何でも
       300年は言い過ぎである。人間ってのは、笑ってはいけない状況であればあるほど、
       些細な事でもやたらと面白く感じるようで、そこに酒の勢いも手伝って、思わずM氏は
       大声で笑ってしまったのだ。

       あまりに大声で笑ってしまったため、隣の席で寝ていたインド人のオヤジが目を覚ま
       してしまった。オヤジの眼はマジで怒っている。それでも笑いの止まらないM氏は、
        ヤケクソでオヤジにカタログを突きつけて、問題の電子手帳のところを指差した。

        すると、たった今まで怒っていたオヤジが、今度はM氏の10倍以上の大声で笑い始め
       た! 涙を流しながら大声で笑い続けるM氏とオヤジ。ただならぬの雰囲気を敏感に察
       したキャビン・アテンダント2名があわてて駆けつけた。インド人のオヤジが彼女たち
       にもカタログを見せると、ナント今度は彼女たちの方がオヤジのさらに10倍くらいの声
       で笑い始めた! 

       キャビン・アテンダントを含めた4人の大人が大声をあげて笑っていれば、当然ながら
       周囲の乗客たちも眼を覚ましてしまう。本来であれば、「お騒が致しまして、申し訳あ
       りません」と謝罪する状況なのであろうが、すでに理性など吹っ飛んでしまった4人は、
       事もあろうに周囲の乗客たちにもカタログを見るように促している。
       

       

       


       まるで細胞分裂のようにどんどん広がっていく笑いの渦。もはや誰にも止められない
       状況であった。10分くらい経過した時であろうか、突然、機内の照明が全部つけられ、
       さらにはオシボリが配られ、N国到着まではまだ3時間以上もあると言うのに、朝食の
       サービスまで始まってしまった。無理もない。もう機内の乗客のほとんどが眼を覚まし
       てしまっているのだから・・・。



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