World Mystery Tour by Mr. M
                 



事件ファイル08


               究極のエアライン編


              M氏の自宅にオークランド在住の知人Tが遊びにやって来た。やってくるなり、
        「いや〜、参った、参った!!  今日のフライトは気流が悪くて、メチャメチャ
        揺れまくり! マジで死ぬかと思ったぞぉ」とコーフン気味にしゃべりはじめた。
        彼の大袈裟な報告を聞いているうちに、M氏の脳裏に、ふと10年前のあの忌
        まわ しい事件が蘇ってきた・・・。

        19××年夏、M氏は知人と共にアジアにある某国某空港にいた。いわゆる
        「個人旅行」と いうやつで、某航空会社の国内線の搭乗を待っていたのである。
        「不自然派の巨匠」 「In Doorの鬼」とまで云われたM氏が、なぜプライベートで
        旅行をしていたかと言 うと、とても公共の場では書けないような深〜い事情が
        あったからである。

        搭乗アナウンスが流れ、いよいよ搭乗と相成った。アジアの地方都市ではよく
        あることだが、その空港にもボーディング・ブリッジなどと言うハイカラな物はなく、
        みんなで仲良くスポットを横切り、タラップで飛行機に乗り込んだ。機材はYS11
        よりも一回り小さな双発機。 しかし外観をチラッと見ただけで、思わず生命保険
        の掛け金 を100倍にはしたくなるようなボロボロの機体であった。M氏の心には
        太文字ゴシック体 で「不安」という言葉が現れた。

        その不安は機内に入って座席に腰を降ろした途端、相撲字体に変わった。そこに
        ある べきシートベルトがないのである! あわててCAを呼び付けて事情を説明
        すると、 CAは爽やかな笑顔で答えた。「No problem!」  確かに彼女にとっては
        No problem かもしれない。しかしM氏にとってはBig problemである。しかも満席の
        ため座席を 移動することもできない。M氏は絶望的な気分になった。しかし、そん
        なことは、それから 始まることに比べれば、まだまだホンの前菜に過ぎなかった。

        出発時刻が過ぎたと云うのに、飛行機は一向に出発する気配がない。10分が過ぎ、
        さらに10分が経過した。突然流れ始めた機内アナウンスの内容に、M氏と知人は
        耳を 疑った!


         ご搭乗のみなさま、ただ今、当便の機長を探して
         おります。もうしばらくそのままでお待ち下さいませ。


        最初はギャグだと思った。イヤ、そう思いたかったのかもしれない。しかし現実に
        機長が行方不明になってしまったのである! 

        そして待つことさらに30分、ヘラヘラと笑いながら行方不明だった機長が現れた。
        どこに行っていたのかは誰にも分らない。とりあえず、機長がコクピットに入り、
        さぁ、いよいよ出発かと思われた時、またまたスゴイことが起こったのだ。CAが
        み〜んな飛行機を降り始めたのである! そして今度は機長からのアナウンスが
        あった。


        ご搭乗のみなさま、先ほどのCAは勤務時間が
        終了したため降機いたしました。新しいCAが
        見つかるまで、今しばらくお待ちくださいませ。
   


        な、なんなんだ、これは! M氏の声はもはや絶叫に近かった。

        またまた待つこと30分、ようやく代わりのCAが乗り込み、今度こそ本当に出発で
        きると誰もが思った。 ところがである! エンジンが回り始めて1分くらい経過した
        ところで、機体右側のエンジンからヘンな音がし始めたかと思うと、次の瞬間停止
        してしまったのだ。

        「ク、クラッチのつなぎ方が乱暴だったのかなぁ???」 M氏は引きつった笑顔で
        精一杯のギャグを知人に投げかけた。しかしその笑顔も30秒と持たなかった。機長
        がキャビンに現れて、「今すぐ飛行機から離れて下さい!」と命令したのである!

        もちろん機内は騒然とした。手荷物など置き去りにして、誰もがが一目散に飛行機
        から離れて行った。300mほど離れたところから恐る恐る飛行機を見守る乗客たち。
        機長は勇敢 にもコクピットに残り、エンジンの再始動を試みていた。そして何度目か
        の挑戦で、やっとプロペラは軽やかに回転し始めた。すると機長が笑顔でタラップの
        ところにやってきて、 「かも〜ん!」と我々を手招きしている。

        「お、オレ嫌だ! 絶対には乗りたくない!」 M氏は駄々をこねた。駄々と言うより
        正論に 近いと言った方がイイかもしれない。しかし、知人になだめられて、ようやく
        M氏は10tくらいに感じる重い足を引きずりながら搭乗した。飛行機はやっと離陸に
        成功した。

        しかし平和と云うものは長続きしないものである。到着10分前になって、また右側
        の エンジンがおかしくなり、ついにはストップしてしまったのである! キャビン内は
        もう悲鳴の嵐であった。もちろん双発機というのは片肺でも安全に飛行できるように
        設計されている。飛行機大好き男のM氏であるからして、そのくらいの知識はあった。
        しかし「暴挙」というものはあくまでも語るものであって、決して実践するものではない。
        M氏は十字を切りながら、必死で般若心経を唱えた。

        そして10分後、乗客の悲鳴の中、飛行機は無事に着陸した。しかも通常着陸扱い
        だった ようで、到着した空港には、救急車はおろか消防車さえも姿はなかった・・・。

        知人Tは相変わらずコーフン気味に今日のフライトのことを語っている。そんな知人を
        見て、M氏は「フン! 自然なんざぁ、それほど手荒なマネはしないわい! この世で
        一番怖いのはパ○ス○ン航空の国内線だぞ!」と思わずにはいられなかった。



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©Knight Flight 2003. Presented By C-sama, Capt. Dan and Chocolist.