World Mystery Tour by Mr. M
                 



事件ファイル09


                 大恥冤罪編


        お、オレじゃない・・・オレが悪いんじゃない・・・M氏は唇を震わせながら、
       足早にその場を立ち去って行った・・・。

       ここは温泉で有名な某県のO市。その日の仕事を無事に終えたM氏は宿泊先の
       Aホテルに向かった。AホテルはO市の中では一番ゴージャスなホテルである。
        ビシッとしたスーツで決めたM氏は、フロントでチェックインを済ませると、ベル・キャ
       プテンの案内で、最上階にあるエグゼクティブ・ルームへと向かった。「さすがM氏は
       リッチだ!」などと考えるのは早とちりと言うものである。ただ単に、いつもはケチな
       クライアントが、何を勘違いしたのか、太っ腹にもこの部屋を用意してくれただけな
       のであった。

       ゴージャスな部屋でゴージャスな一夜を過ごしたM氏は翌朝8時に目が覚めた。
       チェックアウトはお昼12時。まだまだ時間がある。M氏はふと急に散髪がしたくなり、
       さっそくコンシェルジュに電話し、ホテルの近くに理容室はないか尋ねた。すると幸い
       なことに、ホテルから徒歩3分くらいのとこに床屋があり、午前8時から営業している
       とのことであった。M氏はコンシェルジュに予約を入れてもらい、散髪に出かけること
       にした。

       通常なら出かける前にはシャワーを浴び、身なりを整えてから出かけるM氏であった
       のだが、どうせ散髪したら細かい髪の毛が首の周りに残って気持ち悪いので、また戻
       ってからシャワーを浴びることになる。そこで軽く洗顔だけを済ませ短パンとTシャツ、
       そしてビーチサンダル姿で出かけることにした。寝起きのままの髪は、まるでパンクの
       ミュージシャンのようにぜーんぶ逆立っており、オマケにコンタクトも入れていないので、
       目つきは異常に悪くなっている。その上、ポーチがなかったため、M氏はお財布、メガネ、
       タバコ等をコンビニのビニール袋に入れているのだから、一歩間違えば変質者である。

       エレベーターで1Fに降りてみると、妙に辺りが薄暗い。「ん? なんかヘンな感じ??」
       と思いつつも、超ド近眼のM氏は足元に気をつけながら出口の方に向かおうとした。

       その時である! M氏の目に強烈に眩しい光が飛び込んできた! 何が何だか解らな
       い。不安になったM氏は、コンビニ袋からメガネを取り出し、そして改めて周囲を見渡し
      てみた。す、すると、前方に50人くらいの人々がすわっていて、M氏のことを呆然と見つ
      めている!! さらに視線を右横に向けてみると、華やかな衣装に身を包んだ男女と、
      荘厳な衣装を身にまとった老紳士がこれまた呆然とM氏の方を見つめている・・・・。
      M氏は一瞬、自分の置かれている状況というのが把握できなかった。が、次の瞬間、
      M氏はすべてを理解した。そう、この日の朝、ホテルのロビーで結婚式をやっていたの
      である!

      そしてM氏は、よりによって祭壇横の金屏風の背後から、突然に髪を逆立て、短パンに
      Tシャツ、ビーチサンダル、コンビニ袋の姿で登場してしまったのだ!

      カップル、神父、参列者とM氏の間に流れる緊張の沈黙。その間にも強烈な照明がM氏
       を照らし続け、そしてカメラも回っている。M氏は事態打開に向けて必死で考えた。久しぶ
      りに脳ミソ全開で考えた。そして出た結論は当然1つである。

      とにかく一刻も早くこの場を立ち去ろう!・・・・M氏は慌てて走り出した。しかし、それが
      致命傷となってしまった。冷静に考えてもらいたい。ホテルのロビーと言うのは、フロアが 
      大理石などでできているところが多い。Aホテルもご多分にもれず大理石であった。その
      上をビーチサンダルで走ればどうなるか?


      ペタペタペタペタペタペタペタペタペタ・・・・・・


      荘厳なまでに静まり返ったフロアに響き渡るサンダルの足音・・・・・。その瞬間、その場
      に居合わせたすべての人々の緊張の糸が一気に途切れてしまった。


           

          


      まるで津波のように襲い掛かる人々の笑い声。その笑い声を背に浴びながら、M氏は
      目に涙を浮かべながらこう呟いたのであった。

      お、オレじゃない・・・オレが悪いんじゃない・・・・。結婚式があるなんて、コンシェルジュ
      はぜーんぜん教えてくれなかったぞ・・・・。

      M氏はそれまでロンゲだったのだが、理容室についた途端、店員に「結婚式に出るから、
      スカッと短く、刈り上げにして下さい」と頼んだとさ・・・・。


     *     *     *     *     *     *     *     *     *


      もし、さんまの「からくりテレビ」の面白ビデオのコーナーで、上記のようなシーンが放映
      された場合には、ぜひご連絡を頂きたい。そこに写っている髪を逆立てた怪しげな男は
      間違いなくM氏である。



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