■平成17年2月14日 「ベスト徒然」

みなさま、またまたご無沙汰しております、ダン隊長です。

チョコ女史を伴っての「し〜さま探しの旅」は、いまだ続行中であります。徒然に
アクセスしてくださいますみなさまには、ほんとお待たせしておりますが、この辺り
で前回お伝えしましたように、我々が独自に選びました「ベスト徒然草」を掲載して、
ご挨拶に代えさせて いただきたく存じます。

このサイトの出だしが「機内誌」をイメージしておりましたことから、初回は、飛行機
にまつわる過去の徒然草のなかから、1つ選ばせていただきました。よろしければ、
再読くださいませ。

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                      「取材飛行の罠」
  
   いつものように、インターネットで日本国内の主要ニュースをチェックしていた
   ら、取材中のチャーターヘリが送電線に接触して墜落炎上するという、悲しい
   空の事故のニュースが目に飛び込んできた。ワタシ自身、プライベート機とは
   云うものの、一応は操縦桿を握る者の一人として、この手のニュースはとても
   他人事とは思えないものがある。

   「送電線に接触して墜落」と聞くと、ほとんどの方々が「オイオイ、ちゃんと前を
   見て操縦してたんかいな〜ぁ」という感想を抱くと思う。ところが、ここに大きな
   誤解というか、落とし穴が潜んでいるのである。

   確かに日常生活の中で、我々は何度も送電線を見ている。しかし、それはあく
   までも、立ち止まっている状態であったり、せいぜい時速40 km〜50 kmで走る
   車の窓からの眺めであり、送電線の背景ってのは基本的に「青い空」である。
   普段このような状態に慣れ親しんでいる我々からすれば、事故機のパイロット
   に「どこに目をつけとったんじゃい!」と、文句の一つも云いたくなるのも当然
   であろう。
   
   ところが、コクピットからの眺めというのは、地上で見る光景とはまったく違うの
   である。「そりゃ〜飛行機の方がスピードが速いからでしょ?」と思われるかも
   しれないが、実際、空中では周囲に対象物がないため、スピード感ってのは
   それほど感じない。あれは地面が近づいてきてこそ初めて感じるものである。
   それよりも何よりも、地上の物体や、自分よりも低い高度で飛んでいる航空機
   ってのは地上の風景に溶け込んでしまって、恐ろしく見えにくいのである。
   
   論より証拠、まずは下の画像を見て頂きたい。これはフライトシミュレーターを
   使って、自分よりも1,000ft(約300m)ほど下の海上を飛行するセスナを撮影し
   たものである。

     

   背景が青い海なので、白いセスナの機体が容易に視認できると思う。これは
   我々が普段、青い空をバックにして送電線を見ている状況と非常に似ている
   と云える。ところが次の画像だと、どうであろうか? 


     

   これも同じように高度差が1,000ft(300m)ほどあるのだが、自機もセスナ機も
   都市上空を飛んでいるため、先程とは比べ物にならないほど発見しにくいと
   云うことがお分かり頂けると思う。(ちなみに、相手のセスナ機は画面中央)

   上記の比較は、非常に単純なものであり、実はまだ判りやすい方なのである。
   実際に操縦している場合、小型機であれば視界は左右に約300度、上方には
   80度ほど、そして機長席の窓(左の窓)から下方に90度、反対側の窓(右側)
   からは約10度ほど広がっており、そのような広範囲の視界から、たった1機の
   相手機を発見しなければイケないんだから、そりゃマジで大変である。

   それでも、空港近辺であれば管制官が無線で他機に関する情報をパイロット
   に教えてくれるので、慣れてくればまだ割と簡単に視認できるのだが、これが
   山奥にある送電線ともなると、管制官が注意してくれるワケでもないし、飛行
   する前に、あらかじめ航空地図で場所をよ〜〜く確認し、それを基にして現場
   上空で注意深く監視を続けるしか、送電線を発見する方法は無いのである。
   ちなみに、ヘリやセスナなど小型機の場合、基本的には副操縦士がいないの
   で、飛行中に地図で確認する場合には、とりあえず周囲に障害物のない高度
   まで上昇し、そこで安全を確認してから素早く見ることになる。さらに前方だけ
   を見てりゃイイってもんではなく、常に上下左右に前方後方、そして計器類や
   気象状況(山岳地帯は乱気流が発生しやすい)など、すべてに注意を払って
   操縦しなければならないのである。

   まぁ、「飛行のプロフェッショナルたる者が、送電線に接触するなんて・・・・」と
   非難するのは簡単ではあるが、上記でも説明したように、空中から地上や山
   などを背景にして目標物を発見するのは非常に困難な作業であり、ましてや
   送電線のような細い物などは、例え前方にあったとしても、背後が山であれば
   よほど注意をしていなければ、まず発見できないと思う。 さらに、今回事故
   を起こしたヘリは交通事故の取材飛行をしており、パイロットは周囲の安全を
   確認しながらも、出来る限りよい画像を収めてもらうため、一時的に「注意力」
   が取材対象の方に向いていた可能性も高い。(もしかしたら、取材者側から、
   もっと右とか下とか、無理なリクエストが立て続けにあったのかもしれない)

   となると、やはりこのような事故を繰り返さないためには、取材飛行等の場合
   には、機長以外にもう1人、副操縦士を乗務させ、機長は周囲の安全を確認
   しながら操縦に専念し、副操縦士が撮影のためのベストアングルの位置へと
   ナビゲートするなど、役割分担して飛行するなどの対策が必要なのではない
   だろうか? もちろん、その分、経費はかさむかもしれないが、人命には代え
   られないのだから・・・。


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